前回の続き


8月17日の深夜バスに乗り、新宿駅西口に着いたのはAM7:00前後だったろうか。

6時間以上もバスに揺られて固まった体をほぐしつつも、あー・・・こりゃもう一眠りだなぁなんて思いながら帰途につく。丸の内線へ向かう新宿駅西口からの人並みは、盆休み最後の週末の朝の為か、ごった返しているわけではなく、しかし大きなスーツケースを引きながら歩く人が目立った。


私も同様に(とは言っても大きなスーツケースではなく、キャリーのついたIT用具バッグみたいなものだが。)バッグを引きながら改札をくぐる。

いつも新宿駅から乗る地下鉄は、始発であることも多いし、それに新宿で降りる人も多い。だから席はガラ空きなのだが私は座らない。どうせ2駅か3駅程度だ。ぼんやりとドアの前に立ちながら、

そういえば、あの野郎は帰っているだろうかな。俺には出来るだけ会いたくなかろうな・・・だから居ないに違いない・・・

と思っていた。

地下鉄を出て、5分ほど。コンビニで多少の飲み物とパンを買ってマンション(寮)へ。
カギを開けると、予想通りTの靴は無かった。

その時は月曜の朝までに帰ってくるだろ・・・と思っていたのだが。


August20th2007(8月20日)AM6:30


いつもより朝早く目覚めた。いつもは7:30前後なのだが、まさかという不安があったのだろうか。玄関を覗くが、やはり靴は無い。Tは未だ帰ってきていないのだ。確かに、ヤツは朝起きて顔も洗わなければ歯も磨かない。それにしても・・・と思わずにはいられない。いや、きっと帰ってくるだろう。だってヤツは言ったじゃないか。

確かに向いてないし、この仕事好きになれないですけど、今のプロジェクトが終わるまでは必ずやり遂げますよ!

と。いくらバカでも不細工でも(関係ないw)、ここで突然ケツをまくる訳は・・・


August20th2007(8月20日)AM7:50


功「おはようございます。朝っパラからすいません。」

上司「いやぜんぜん構わないよ、どうした・・・?いや、まさか?」

功「ええ。まさか、のようです。ヤツぁバッくれた模様です。申し訳ない限りです・・・」

上司「ぐは。・・・・いやいや、お前が謝る事ではないよ。よくやってくれたと思ってる。・・・しかしどうしたもんかな。
・・・・うぬ〜・・・嫌だなぁw
ま、OK。俺からクライアントには言っておく。ありがとうな」

功「申し訳ありません。ありがとうございます。宜しくお願いします。それでは・・・」


電話を切ってため息。そのままチームの仲間に電話を掛ける。

功「すまんな、朝から。悪い知らせだ。」

同僚「うぇ。やっぱり?この時間だからそうだろーと思ったよ。アイツのネタ?」

功「うむ。どうやらバッくれた模様だ。俺らは今日から会社で非常に肩身が狭いが、覚悟しておいてくれ。すまない。」

同僚「どっはー・・・・きたぁ・・・・。
・・・いや。お前は悪くないよ。しゃーないよな。うん。OK,サンクス!じゃあ会社で!」

功「む、会社で。」




その後、弊社とクライアントの間で、Tの行方について、そして補充要員についてが語られた。大企業相手の仕事を投げっぱなしジャーマンってのは、やっぱある意味凄い。T、どこにいるんだか知らんがお前すげぇよ。でもこうなっちゃった以上帰って来られても困るから、出来ればどこかで






死んでろ





と、思わずにはいられないのであった。




T失踪、後日談へ
09.03 (Mon) 00:59 [ 寮生活 ] CM0. TOP▲
未だTネタは尽きないのだが、ネタを超越する出来事が起きた。

これは最早彼の堕落っぷりをアッピールするよりも、プライオリティの高い出来事である。

Aug20th-07(2007年8月20日)














T失踪。

















まぁ保たないだろうな、と兼ねてより社内でも言われて居た事ではあるが、まさか失踪とは。誰もが動揺を隠せなかったのも止むを得ないかも知れない。






さて、Tが失踪したのは8月20日(月)とされるが、正確にはそうではない。また、単に逃亡しただけじゃねーの?とも十二分に考えられるが、状況からして常識では失踪としか考えられない。常識の範疇に納まらない輩であったことも確かだが。彼が失踪と断定されるまで(決して社会的に―つまり警察に届けたとかそういのではなく―失踪と認められたわけではないが)の経緯を追ってお話しよう。





Aug10th-07(2007年8月10日 金)
この日、我々は夏期休暇前の最終勤務日であった。我々というのは、Tがプロジェクトとして私と同じ仕事に就いていた事からである。我々はその他の仕事もこなしつつである為、相変わらず社内or現場であったが、Tはプロジェクト対象企業の本社ヘルプデスクであった。当然本社勤務(超短期ではあるが)である。
以上の前提を踏まえ、我々はメインの客である某企業が夏期休暇に入る時期、同様に休暇に入る予定であった。それがすなわち、Aug11th-07(2007年8月11日 土)〜Aug19th-07(2007年8月19日 日)にあたる。
Tは我々と違ってバイト扱いである為、休めば休んだだけ給料は減る。しかも借金まである身だ。当然休んでなど居られない。その為、彼は夏期休暇期間もその他の仕事をこなす予定であった。

が。

自堕落の極点まで達した彼が、他人が休むときに働こうはずも無い。当然、自発的夏期休暇を私のスケジュール同様にとったのである。

私はこの日、休みに入ることだしある程度のことを片付けて、早めに帰ろうとしていたのであった。
一服していたのが18:00頃。Tから連絡が入る。
メール内容は以下の通り。

2007/08/10 18:27
From:T
Sub:お疲れ様です。
本文:友人が新宿で飯ご馳走してくれるので、ゴチになってきますね。

それに対しての返信。
2007/08/10 18:48
From:功夫
Sub:Re:お疲れ様です。
本文:はいよー了解。いってらー


この日、彼は帰らなかった。

Aug11th-07(2007年08月11日 土)
私は長期休暇に入る前にと、部屋の片付けにいそしんでいた。その為、寝たのがAM:6:00過ぎであったと記憶している。
しかし、翌日先輩が会社で仕事するというので、冷やかしに行ってやろうと起きたのがAM:9:00。

朝目覚め、Tが居ないことを確認(靴が無い)した後、リビングへ行くと違和感。
Tの部屋は、扉が開きっぱなしだったはず・・・・?




閉まっている。



キッチンを見ると、空のご飯釜
どうやら私が寝ている3時間程度の間に、飯を食って早々にまた出ていったらしい。

私に出会えば仕事しろとか勉強しろとかうるさいから逃げた、というのは頷けない話では無い。そう納得して、私は会社へ行った。

夜、帰郷するための荷造りに部屋へ戻ったが、Tの帰ってきた形跡はまったく無かった。
私は翌日帰省した。



後半へ


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08.27 (Mon) 22:38 [ 寮生活 ] CM5. TB0. TOP▲
Tの入社から若干日も過ぎ、彼にもメールアドレスが用意された。
私は上司より彼に【DeskNets】の使用方法を教えてやってくれ、と頼まれていたので、会社から戻ったその晩、彼に教えることにした。


功「お疲れ!T,おきてるか?」

T「はーい。。。」
ゴソゴソ、ガタタ。

何をやってんだか。エロサイト覗くのは0時過ぎてからでも良かろうに・・・・
などと思いつつ、数分待つ。

T「すいません、お待たせしました。なんでしょう?」

功「うむ。ついに会社からメールアドレスも用意されたようだぞ、お前のな。だから、DeskNetsの使用方法と合わせて教えようと思う。準備OK?」

T「はい、了解です!」

功「よし、じゃあまずは、ブラウザを立ち上げて、アドレスバーにこのURLを入れて・・・Enter。ホイ。これが俺らの会社のDeskNetsだ。」

T「DeskNetsってなんですか?」

功「まー、見りゃわかると思うが、webベースで社内のスケジュールやメール、その他書類管理やら休暇申請だったり・・・等々、事務処理なんかまで行うイントラネット対応のグループウェアのことだいね。で、とりあえず社内の事はこのDeskNetsで見るわけだが、まずはブックマークしておかないとな。と、ホイ。これでOK(Ctrl+Dでブックマークのショートカットキーだ!)。で、お気に入りを見てみると・・・・見ると・・・・・見るt・・・・」

T「あっ。イヤ!これは・・・イヤ!ちょっと・・・!」


追加したブックマークを見せてやろうと、お気に入り(A)をクリックしたところ現れたのは、膨大なエロサイトのブックマーク。知らなかった事だが、ブックマークを整理せずに延々と増やし続けると、ブックマークに矢印が出るんだな・・・・



そんで、しかも矢印にポインタを合わせると、当然だがスクロールし始める。待つこと1分ほど。どうやら終わる気配は無い。

功「ま、まあ良いや。男だもんな。エロサイトぐらい興味あるわな。でもな、これちょっとやりすぎだから。人に見られると引かれること間違いなしだから、バレないようにしような。」

T「あ、う。いやその・・・・はい。」

功「で、まぁこれがDeskNetsでだな。使い方は・・・」

と教え進んでいく。流石に膨大なエロサイトのブックマークには若干引いたが、これしきの事で萎えていては先輩などやっていられない。

功「・・・と、いうわけだ。もちろんキャビネットをクリックすれば色んなワークフローが表示される。こういったマルチメディアファイルなんかもある。例えば・・・・あれ?お前なんでこんなにメディアプレーヤーが一杯あるんだよ・・・・・。よくわからんもん一杯入ってるなぁ。。。どれだ?」

T「あ!えっと!いや、これかな?・・・・あれ?いや・・・これかな?えっと〜・・・・」

功「あーもういいよ。どうせwmvなら大抵のもんで再生できるんだから・・・・ま、この辺か。」

ポチポチ。(ダブルクリック)
うぃーん(再生開始)

エロビデオ再生開始。

功「・・・・・・・(リアクション出来ない)」

T「おぉっ!?これ違いますうううううううう!!?」

功「あのなぁ・・・・(苦笑)。ってぇか、お前ちょっとデスクトップとかアイコン散らし過ぎだろう。意味わからんファイルばっかだし・・・・。まさか全部エロファイルでもあるまいしさ。消しちまえって。な?」

T「・・・・・・・いやぁ・・・・・・・。」

功「・・・・・・え。これ・・・・・全部そうなの・・・・・・?」

T「へへ。男ですから♪」

功「・・・・・・。そう・・・・・。」

恐れ入ったよ、T君。オイラこれほどエロファイルしか散らばってないPC初めて見たよ。もう切ない通り越してなんとも言えないよ。

功「ま、まぁ男だしな。そうだよな。うん。OK。そうだ。でもな、ちょっとこれは露骨だから、やっぱりバレないようにしような。な?」

T「すいません。ちゃんと整理しときます・・・・。」


と、Tのちょっと人には見せられない側面を垣間見て若干凹んだ私ではあったが、教えるべきことはなんとか教えることが出来たのであった。

続く


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08.19 (Sun) 00:22 [ 寮生活 ] CM2. TB0. TOP▲
T「その後、当然独りで生きていくことなんて出来なくて、親戚に引き取られました。引き取られた後は高校卒業まで養ってもらいました。そして、卒業後に【独りでわずらわしい事から解放されたい】って一心で、工場の寮に入って、4年働いたんです。」

――――――と、Tは身の上を語ったのであった。


ドラマのような展開過ぎやしないか?とその時は思わなかった。
案外、そんなやつも居るもんだな、その程度にしか感じなかったように思う。


私の中で思う人間とは、逆境を乗り越えれば乗り越えるほど――――つまり、生き残ればその分だけタフにもなろうし、賢くもなろうというものであった。しかしながらこのTは、これだけタフな状況にさらされながら、あろう事か駄目になれるだけなってしまった、というのだから驚きだ。

もちろん、Tの語った身上から、Tが駄目になる理由は推察し兼ねた。
当然、私は訊いてみた。

功「そうか・・・・・。ところで、俺が最初に訊いた【独り暮らしなどしていながら何故自活能力がないのか?】って問題には、まったく触れてないように思えるのだが。そこにお前の話は関係してくるのかい?」

T「いや、ああ・・・・そうですね。はい。
ええと・・・なんていうんですか。
やっぱり、何にしても、投げやりになっちゃったんですよ。どうでもいいやって。
そのせいじゃないですかね。」

功「そ、そうか。なるほど。」

なんてシンプルなんだろう。親の死が引き金で、思考することをやめてしまった、とでもいうのか?
いやいや。なんか変だ。
親が亡くなってから数年。【一応は】自活してきたという。

【どうでもいいやって思っちゃった】

だけでここまで駄目になるものか?まったく釈然としないが・・・・



ここで、もっと深くにまで立ち入って考えようとしなかった自分が愚かでならない。
私は考えるのをやめ、ともかくTには問題のある箇所については指導することにした。

功「ま、まあわかった。お前が大分ヘヴィな過去を抱えていた事は。
しかし、そんな事は、というのも何だが、お客さんには、【僕親を亡くしたんで仕事が出来ません】なんて言えるわけも無いわな。
だから、一般人として、そりゃあないだろ、ってところにはこれから俺が口を出すと思うが、へこたれずに頑張ってくれ。」

T「了解です!色々、すいませんでした!頑張ります!」



この後、きっと彼も頑張るだろうと安心した私は、更にTの奥深さを思い知らされるようになっていくとは、知る由も無かった。

続く


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08.19 (Sun) 00:22 [ 寮生活 ] CM0. TB0. TOP▲